2013年06月08日
第19回 酒井義己水彩画展
6月2日(日)〜6月16日(日)の間、旧来住家住宅ギャラリーでは「第19回 酒井義己水彩画展」
が開かれます。酒井さん(72・丹波市山南町岩屋)はリュック1つ背負って各地を旅し、
人との出会いを楽しみ、人々が生活を営んできた古い民家や、歴史ある建物を描いた
水彩画35点を展示されます。今回はこの1年間で旅した大阪、奈良、岡山、岩手などのほか、
地元の丹波市や篠山市で見つけた古い民家や建物を描かれています。
1年間で平均14〜15回旅をし、遠くは北海道、沖縄、九州、東北とこれまでに訪れた場所は
250カ所以上。最小限の荷物で、泊まれる施設がない時は野宿をしながら1〜2週間旅に
出られます。「いくつもの忘れられない出会いがあった」と笑顔で話す酒井さんはとても純粋で
素敵な方です。
いつも旅先で使うリュックは、8号サイズの絵がちょうど入ります。だから8号サイズまでは、
すべて現地で完成させます。額縁もすべて手作りです。サイズの大きな絵(50号サイズなど)は
現地で描けないので、3号サイズで現地で描いたものをアトリエに持ち帰り、描かれるそうです。
現地の空の様子まで繊細に描かれ「自分の目で見たものしか描かないので、写真などでは
描けません」とおっしゃられました。
上の三作品は岡山県高梁市吹屋です。昔は銅山で繁栄した街です。銅の中から「べんがら」
という物質がとれます。家の色が赤っぽいのは「べんがら塗り」という塗装技術で、木部や壁に
「べんがら」を塗ったり混ぜることにより、防腐の役目をはたします。夕日があたる刻、
家が真赤になりとても美しく見えます。銅山夫を相手にして街は潤っていましたが、
さびれてしまい、銅からとれる「べんがら」が特産物になりました。
家の塗装技術の中にも、街の歴史が隠されています。
上の二作品は大阪 野田です。150年ほど前に建てられた家で、現在でも地主さんが住んで
おられます。まわりはマンションや高層ビルばかりのところに、ポツンと昔の家があります。
1日中歩き回って、この家をみつけられた時は、とてもうれしかったそうです。
ちなみに昔、大阪がまだ田んぼだった頃は水路で船を浮かべて稲刈りを行っていました。
現在この地域で行き止まりが多いのは、都市計画の遅れで水路がそのまま道路になって
しまったからだそうです。田んぼに水を入れるための水路なので、人や車の通る事は
考えていなかったということですね(笑)
上の作品 岡山県津山市 「古い看板が残る商家」
上の作品 岡山県倉敷市 「橋の袂にある旧家」
上の作品 岩手県盛岡市 「盛岡消防分団 消防庫詰所」。
私も実物を見てみたい気持ちになりました。板張りの詰所の古さ、火の見櫓の
警鐘台、右奥にはすぐに出動できる扉の中に、ポンプ自動車が入っているのを想像します。
そして二階では若い団員達が酒を酌み交わしながら、地域のことを熱く語っているような
場面をイメージします。
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酒井さんは言われました。「なぜ家の絵ばかり描くのか?」と思われるでしょうが、
家にも一軒一軒全く違う物語(ストーリー)があります。描きたい家が見つかると、回りを
ぐるりと歩き、建物に手をあて、その建物の歴史、人の営み、栄えていたころの町並みを
想像(イメージ)して、その物語(ストーリー)を感じてから描きます。路地や建物の汚れ、
空気などもその場所で感じることが大好きです。同じものは一つもないので、いつも新鮮です。
例えば、一軒の旧家を見つけたとします。そこには、お嫁さんが来たり、赤ちゃんができたり、
おじいさん、おばあさんが死んだり、いろいろイメージしながら描いていきます。
そこには人が住み今日までに伝わった物語(ストーリー)があるので、それを感じたいと
言われました。描きたいものを真ん中にドンと置く酒井さんのスタイルは、とてもシンプルで
心を打たれます。「旅先での出会いは大切な宝物。風景の中に身を置き、
見たままを描く。難しく考えずにやってきたから続けられています。」と話されました。
上の作品 兵庫県篠山市 「酒蔵 秀月」
上の作品 兵庫県丹波市 「柏原の太鼓蔵」
(広報・芋焼酎)